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西明寺

新近江名所図会

新近江名所圖会 第161回 紅葉の「湖東三山」と「湖東三山スマートインターチェンジ」開通

東近江市愛荘町甲良町

(甲良町池寺・愛荘町松尾寺・東近江市百済寺町)

今年も紅葉狩りの季節がやってきました。9月中頃に北海道大雪山に始まり12月にかけて九州に南下していくことから、桜前線に対して紅葉前線と呼ばれています。紅葉の名所は全国にたくさんあり、京都の社寺をはじめ各地の渓谷に多くの観光客が訪れます。標高の高い山々で見られるブナ林やナナカマドの赤・ダケカンバの黄と緑の木々が織りなす秋のコントラストの光景は、多くの人々を魅了しています。
紅葉とはもみじ(紅葉・黄葉)などの落葉広葉樹の葉の色が変わる現象で、赤色は紅葉(こうよう)、黄色は黄葉(こうよう・おうよう)、褐色は褐葉(かつよう)と呼ばれ、総称して紅葉と呼ばれています。
近江にも紅葉の名所があります。比良山・比叡山や坂本里坊・日吉大社、石山寺、そして鈴鹿山系の西山麓に位置する湖東三山の西明寺(甲良町)・金剛輪寺(愛荘町)・百済寺(東近江市)と永源寺(東近江市)では、見事な美景をみせてくれます。湖東三山はいずれも天台宗の古刹で、西明寺と金剛輪寺の本堂は西を正面に向き、西方浄土を仰いでいるといわれています。湖東三山の四季おりおりの自然美と歴史的建造物やきれいに整備された庭園との調和は、湖国近江を代表する景観といえます。秋には参道の石段や石仏、苔むした石垣を彩る紅葉を鑑賞される観光客で大変賑わっています。

おススメPoint

西明寺
西明寺:苔むした緑の石垣と紅葉を待つもみじの参道

ここで少し湖東三山について概観します。西明寺は湖東三山の一番北側に位置し、創建は承和元年(834)に伊吹山で修行をした三修が開いたと伝えられています。本堂と三重塔は鎌倉時代の建造物で国宝に指定され、三重塔内部には大日如来を安置し極楽を表した極彩色に描かれた壁画があります。元亀2年(1571)、比叡山では織田信長の焼き討ちで多くの堂宇が焼失していますが、西明寺は寺僧たちが山門近くの坊舎を燃やして全山が焼失しているように見せかけ、本堂と三重塔は焼き討ちを免れたと伝えられています。また、第130回で紹介しました「不断桜」もあり、本堂に向かう長い石段が紅葉に染まる頃、桜が満開になる西明寺特有の景色があります。

金剛輪寺
少し色づきはじめた金剛輪寺の参道

金剛輪寺は湖東三山の真ん中のお寺です。天平13年(741)に行基が創建したと伝えられ、平安時代に円仁が天台密教道場として再興したといわれています。国宝の本堂には多くの仏像が安置されています。このほど、重要文化財である三重塔の檜皮葺き替え工事が完了し、さらに、名勝明壽院庭園の整備も進められています。金剛輪寺も織田信長の焼き討ちで被害を受けていますが、西明寺と同じように寺僧(住職ともいわれている)の機転で本堂と三重塔の焼失を免れています。総門を入るとすぐに愛荘町立歴史文化博物館があり、そこから長い石段を上部に向かうと、石段の両側に多くの坊跡がならび本堂に至ります。金剛輪寺の紅葉は特に色が濃く、「血染めの紅葉」と呼ばれ、真っ赤に燃えます。また、春から夏には石楠花や紫陽花が見頃を迎え、四季折々の風情が心を癒してくれます。

百済寺
百済寺:城郭的な石垣がみごとです。

次に百済寺です。湖東三山の最も南側にあるお寺です。紅葉に彩られた長い石段を上っていくと本堂に着きます。春の桜も見事です。聖徳太子創建と伝えられ、百済の龍雲寺という寺院を参考に建立したことからその名がついたといわれています。百済寺も広大な境内に300を超える坊跡が所狭しと点在しています。西明寺・金剛輪寺と異なるのは、本堂に近づくと石段は急坂になり、城郭を彷彿する立派な石垣が現れ、湖東平野の眺望が開けてきます。この城郭的構造は、時の政治に巻き込まれていった寺院であった証しといえます。そのため、明応元年(1492)・明応7年・文亀3年(1503)の3回、兵火や火災、織田信長の焼き討ちにより灰燼に帰しています。現在の本堂は江戸時代の再興です。

周辺のおススメスポット

湖東三山SICの看板
湖東三山SICの看板、SICは国道307号に接続されます。

平成25年10月21日、金剛輪寺に近い「秦荘パーキングエリア」に「湖東三山スマートインターチェンジ(SIC)」が開通して供用開始され、開通に併せて名称が「湖東三山パーキングエリア」に変更されました。近畿地方では初めてとなり、ETC搭載車種の利用が可能です。期待される効果は、秋の行楽シーズンを始めとする観光振興にとどまらず、交通アクセスの利便性の向上による企業立地、物流の効率化、医療や災害時における緊急時での対応など様々あり、湖東地域の活性化に繋がります。
なお、湖東三山の近くには、永源寺やお多賀さん参りで有名な多賀大社、胡宮神社・大竜神社・豊満神社などがあります。さらに、白鳳時代や奈良時代の古代寺院が多く分布していて、愛智秦(えちはた)氏などの渡来人や豪族犬上氏との関係が指摘されています。
これからが秋本番。湖東三山と永源寺の紅葉は例年11月上旬から12月上旬にかけて見頃ですが、今年はどうでしょうか? 暑い夏の年の紅葉は期待出来そうです。秋は日々深まっています。休日の混雑回避のため、時差観光と既設ICに加えて湖東三山SICの利用がおすすめです。

アクセス

西明寺

【公共交通機関】JR東海道線河瀬駅からタクシーで約15分
【自家用車】名神高速道路湖東三山SICから東へすぐ

金剛輪寺

【公共交通機関】JR東海道線稲枝駅からタクシーで約15分、近江鉄道尼子駅からタクシーで約12分
【自家用車】名神高速道路湖東三山SICから国道307号を北へ約5分

百済寺

【公共交通機関】近江鉄道八日市駅からタクシーで約15分
【自動車】名神高速道路湖東三山SICから国道307号を南へ約15分

11月中旬~12月上旬には湖東三山を巡るシャトルバスが運行されています。

(葛野 泰樹)

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