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新近江名所図会

新近江名所圖会 第49回 琵琶湖の恵み-知内川のカットリヤナ-

高島市
高島市マキノ町海津
知内川のヤナ
知内川のヤナ

平成20年に、高島市マキノ町海津周辺の景観が景観が「高島市海津・西浜・知内の水辺景観」として、重要文化的景観に選定されました。湖岸の石垣の景観が良く知られていますが、実は、動態的な漁業景観として、知内川の河口付近で操業されている「カットリヤナ」も、重要文化的景観を構成する要素に含まれています。
一般的にヤナは、川の流れに乗って降ってくる魚を捕るクダリヤナが多いのですが、近江の場合、逆に河川を遡上する魚、特に春から夏にかけて成長のために河川を遡上するアユと、秋に産卵のために遡上するビワマスを漁獲するためのノボリヤナが発達していることが、特徴となっています。
このノボリヤナの一種であるカットリヤナは、湖西の河川(安曇川・石田川・知内川)で操業されているノボリヤナです。
この仕組みはなかなか複雑で、文章で表現しきれませんが、簡単にいえばこのような感じです。川をアーチ型に張った簀で堰き止め、水流を左右に振り分け、流れを遡ろうとするアユをこの二つの水流に集めます。さらに、イタグチと呼ばれる部分で水を分流し、狭い隙間から、「カットリイケ」と呼ばれる小さなプールに激しい勢いで水を落とします。この流れに押し流されて「カットリイケ」に落ちたアユをすくい取って漁獲するものです。
ここで漁獲されたアユは、友釣り用のアユ苗として出荷されます。かつては、北は北海道、南は台湾まで出荷された時代があったということです。

おすすめPoint

ジャンプするアユ
ジャンプするアユ

カットリヤナ漁は、その年々の気候条件によって異なりますが、4月頃から7月頃までが最盛期です。この頃、川を堰き止める簀を超えようと盛んにジャンプするアユ、そして、「カットリイケ」に次々と落ちるアユを見ていると、思わず時を忘れてしまいます。
また、ウグイの産卵期には水面を埋め尽くすほどのウグイの大群がヤナの周辺に集まっているのを見ることができます。そして夏、今度はハスの大群が遡上して来ます。漁師さんにうかがうと「昔はもっともっと魚が多かった」と語ってくれますが、今なお「豊穣」という言葉が相応しい魚の群れに合うことができます。

周辺のおすすめ情報

周辺のおすすめというよりは、他の漁法を一つ紹介したいと思います。

◆オイサデアミ漁

オイサデアミ漁
オイサデアミ漁

早春、湖岸を不思議な一団が湖岸を歩いているのを見ることがあります。一人が扇形のの大きな網を持ち、3人ほどが竿の先に烏の羽を付けた竿を持っています。湖国に春を告げるオイサデアミ漁の漁師さんです。
湖岸に集まってくるコアユの群れを見つけると、網を沈め、この中にウザオと呼ばれる烏の羽付きの竿で、アユの群れを散らさないように追い込んで行きます。鳥を恐れる魚の習性を利用したユニークな伝統漁法です。

◇農業公園 マキノピックランド

湖の恵みの後には、山の恵みが楽しめるスポットです。マキノピックランドです。マキノピックランドではサクランボ狩り、ブルーベーリー狩り、りんご狩り、栗拾いと四季折々の果物狩りを楽しむことができます。また、地元で採れた野菜を販売する産直の販売所もあり、お手頃価格で新鮮な野菜を手に入れることができます。そして、もっともおすすめしておきたいのは、イタリアンジェラートです。絶品です。寄った際にはぜひ食べてみてください。

アクセス

【公共交通機関】JR湖西線マキノ駅下車、湖岸方向に徒歩7分、さらに南に10分で知内川河口。ここから上流を見るとカットリヤナが見える。
【自家用車】名神高速道路京都東ICから湖西バイパス経由、国道161で90分、北陸自動車道木之本ICから40分、駐車場無し


より大きな地図で 新近江名所図絵 第1回~第50回 を表示

(大沼 芳幸)

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