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新近江名所図会

新近江名所圖会 第87回 比良山系と琵琶湖が織り成す風景 -比良の七重衣

高島市
高島市鵜川
鵜川の湖岸から見る比良の山々
鵜川の湖岸から見る比良の山々

古代官道のひとつ北陸道は、琵琶湖と比良の山々の裾野に挟まれた狭い扇状地を通っています。
京から穴太、和邇と経由してきた古代官道は、写真1に写る一番手前の北小松の埼にぶつかります。この地点は直接比良山系の山裾を琵琶湖に濡らしており、これまで小さな扇状地が形成した穏やかな起伏しかなかった湖岸とは違い、山塊が湖岸に迫り崖をなしています。ここを通過するには断崖下の琵琶湖の水が洗う場所を通らなければならなかったのです。古来より交通の難所となっていた所です。
今のJR湖西線は山麓をトンネルで通過しこの難を逃れていますが、少し前まではこの狭い崖下を波に洗われるように国道161号と江若鉄道が並行して通っていました。この様子は大阪と京都の間の狭隘地山崎とよく似ています。
山崎は国道171号、JR京都線、新幹線、阪急電鉄、そして名神高速道路が狭い場所を接触しながら通過していきます。そして山崎のすぐ上の山は天王山、天下取りのカギとなった戦いの舞台でもあります。
奈良時代よりも前、鵜川の北の山に設けられた古代の城「三尾城」もまたこの狭隘な地形ゆえ造られたのでしょう。

北小松の埼のトンネル歩道
北小松の埼のトンネル歩道

今は国道しか通っていませんが、山側に設けられている歩道は、元は江若鉄道の軌道敷で、丈夫なコンクリート製の屋根が架けられ、急傾斜な崖面には頑強な崩落防止が施されています。この難所は足元の悪さに加えて頭上からの落石にも常に気をつけて足早に通らなければならなかったのです。大津側には通過するに際して、落石の難にあわないよう願をかけた「石除け地蔵」が今も祀られています。

おすすめPoint

石除け地蔵
石除け地蔵

このルートで高島の湖岸を北から走り下り、白髭神社を過ぎて鵜川(うかわ)に至ると右手に幾重にも重なる比良の山々が見えてきます。折り重なるその山々は、美しく着重ねた麗女が裾を濡らしてはじかむかのように裾野を緩やかに琵琶湖に垂らしています。比良の七重衣の呼び名にふさわしい光景です。

周辺のおすすめ情報

周辺には第13回の「江若鉄道廃線跡」第24回の「白髭神社」・「鵜川四十八体仏」第66回の「大溝城跡」第76回の「鵜川の棚田」とこの新近江名所図会で紹介した名所ポイントが目白押しです。これらをハシゴしてみてはいかがでしょうか。

アクセス

【公共交通機関】JR湖西線北小松駅下車、江若バス鵜川下車、徒歩10分
【自家用車】国道161号を大津方面から高島市に入ってすぐ、駐車場なし


より大きな地図で 新近江名所図会 第51~100回 を表示

(横田 洋三)

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