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新近江名所図会

新近江名所圖會 第405回 東海道でちょっと一服―旧和中散本舗―

栗東市

 滋賀県には、古代以降、東山道(中山道)、東海道、北陸道、北国街道など都から東日本に行くため主要路が通っていました。そして、その主要路には、通行する人が立ち寄る場所、古くは駅、江戸時代には宿場、立場(たてば)が整備されました。滋賀県内では、東海道の草津宿、水口宿、土山宿、中山道の守山宿、武佐宿、愛知川宿、高宮宿、鳥居本宿、番場宿、醒井宿、柏原宿、北国街道の木之本宿などが往時の面影を残しています。ちなみに「立場」とは宿場と宿場の間にあって、旅人や人足、駕籠かきなどが休息する場所のことです。

写真1 旧和中散本舗主屋 手前は東海道

 今回、紹介するのはその「立場」の一つです。旧東海道の草津宿と石部宿との間にある「梅ノ木」です。梅ノ木は、現在の六地蔵の集落にあたります。東海道沿いに面して家が並んでおり、何となく当時の雰囲気がありますが、残念ながら当時の建物等はほとんど残っていません。その中で、唯一、当時の姿を留めているのが「旧和中散本舗(きゅうわちゅうさんほんぽ)」です。江戸時代、梅ノ木には旅人のために道中薬を売る店が数軒あり、「和中散(わちゅうさん)」と呼ばれる万能薬を売っていました。現在残っている「旧和中散本舗」は、公家・大名などの休憩所も務めたといわれています。徳川家康が腹痛を起こしたとき、この薬を服用したところ、たちまち治ったことからその名が一躍知られるようになったと伝えられています。

写真2 製薬機

 現在、この「旧和中散本舗」は、建物が国の重要文化財、そして屋敷の奥には小堀遠州(こぼりえんしゅう)作と伝わる庭園があり、国の名勝に指定されています。

おすすめPoint

 「旧和中散本舗」のおすすめポイントは、現在も東海道に面した、間口11間の広い店構え(写真1)と邸宅の内部にある昔のままの姿で保存されている直径4メートルにも及ぶ木製の動輪や歯車の付いた製薬用石臼(写真2)です。

 建物は大きく、西みせ(製薬場)、中みせ(帳場)、東みせ(店客の休憩場)、江戸時代の高貴な人々に小休本陣としてつかわれた書院の4つの区画に分けることができます。その中の製薬場に木製の動輪、歯車によって操作される製薬用の石臼が残されており、そのサイズには驚かされます。現役ではありませんが、往時に街道からみえる場所で実演販売をしていた姿が想像できます。

 江戸時代に作られたガイドブック『近江名所圖會』には「梅ノ木」、「是斎 和中散(ぜさい わちゅうさん)」の項目があり、絵図にも「ぜさい」の看板を上げ、東海道に面して商売をしている風景が描かれています。今も軒先には看板が掛けられています(写真3)。

写真3 「ぜさい」の看板

周辺のおすすめポイント

 旧和中散本舗は紹介した通り旧東海道沿いにあります。そこで、JR草津線手原駅から旧東海道を歩きながら「旧和中散本舗」訪れることをお勧めします。

 道沿いには、国の登録文化財である川崎陸男家住宅や里内家住宅、道標など往時の姿を留める建物等が点在しており、それらを探しながら「旧和中散本舗」を訪れるのはいかがでしょうか。

 途中、お昼ご飯は、少し旧東海道を外れますが、「JA滋賀田舎の元気や」がおすすめです。

 

アクセス

 春季と秋季に特別公開を行っています。HP等で確認してください。栗東市観光協会(JR手原駅2階 栗東観光案内所内)TEL:077-551-0126
※春季・秋季の特別公開の期間以外は事前予約制となっています。(旧和中散本舗:℡077-552-0971)  入館料:大人500円 子供200円
【自家用車】名神高速道路栗東ICから10分 少ないですが駐車場有
【公共交通機関】JR草津線手原駅から徒歩30分
*平日のみ「くりちゃんバス」葉山循環線(一日4便)を利用することも可能。手原駅から旧和中散本舗まで約8分。本数が少なく、マイクロバスなので団体では乗れません。詳しくは栗東市HPをご確認ください。
*春季・秋季の特別公開期間の頃は「こんぜめぐりちゃんバス」という、JR手原駅から旧和中散本舗、大野神社、道の駅こんぜの里りっとうなどを経由し金勝寺(こんしょうじ)までを往復する小型のバスが、土日祝のみで便数は少ないですが運行されます。詳しくは栗東市観光協会のHPをご確認ください。

《参考文献》
『近江名所圖會』1974 同朋舎

(堀 真人)

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