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新近江名所図会

新近江名所圖會 第419回 なんじゃこりゃ―花咲き誇る古社 沙沙貴神社―

近江八幡市

 私が小学生のころに流行っていたテレビドラマの一つに「太陽にほえろ」という刑事ものがありました。有名なドラマだったのでご存じの方も多いですよね。その中で今になっても語り継がれるようなシーンが「なんじゃこりゃ」です。松田優作さん演じるジーパン刑事が犯人との銃撃戦後に、守ってやったはずの男によって、その臆病心から腹部に銃撃を受け、力尽きる前に口にした台詞です。歴代の殉職シーンでもトップにあげられ、「太陽にほえろ」を当時見ていなかった人でも知っているエピソードです。ちなみに私はこの時間、新日本プロレスを見ていました。

 「なんじゃ」についてはもう一つ知られているエピソードがあります。ご存じ水戸黄門こと徳川光圀公がとある神木の前を通りがかった時に、その木の名前を地元民に「この木はナンジャ」と尋ねたました。ところがその地元民はよく聞き取れなかったことから「ナンジャモンジャ(何じょう物じゃ)」つまり「なんというものか」と返答し、それが木の名前と勘違いし広まったという説があります。また、尋ねたのは将軍で、返答したのが光圀公であったという話もあり、いろいろヴァリエーションはあるようです。

 このナンジャモンジャという木の名前ですが、一つの樹木名ではないようです。大半はヒトツバタゴのことを指しているようですが、ニレやボダイジュなども一部では呼ばれているようで、いわば愛称といってもいいです。

写真1 満開のナンジャモンジャ

 このヒトツバタゴ(ナンジャモンジャ)は沙沙貴神社のものがよく知られています。

 沙沙貴神社は近江源氏佐々木氏発祥の地ともされる近江八幡市安土町に鎮座する古社で、式内社にも列し、近江源氏の氏神を祀る由緒ある神社です。この境内にナンジャモンジャはあります。季節になると、白い小さな花で木全体が真っ白になり、それはもう綺麗です。ただ残念なことに散りやすいため、鑑賞できる期間が短いので見に行かれる方は注意が必要です。しかし、散った花が樹下に落ち、一面が白いじゅうたんを敷き詰めたようになるのもおつかもしれません。開花時期はゴールデンウイーク頃になり、県内外からの多くの人出で賑わいます。なお、ナンジャモンジャの木は境内だけでなく、近江八幡市安土町支所側からの道沿いでも何本か植わっています。

写真2 真冬に咲くロウバイ

 実はこの沙沙貴神社ですが、ナンジャモンジャだけではありません。みごとな「ロウバイ」もあります。「ロウバイ」は漢字で書くと「蝋梅」で、その字のごとく蝋細工のような花が咲きます。花の咲く季節は1月から2月頃で、梅より少し早く開花します。ちなみに漢字で「蠟梅」と書きますが、梅とは別種だそうです。花の形をよくみると、たしかに梅とは違います。春や夏の花と違って華やかさこそありませんが、冬の花の少ない時期に咲くこの蠟梅は、ありがたい存在です。

おすすめポイント

 神社へのお参りがすみましたら、本殿の裏手に回ってみてください。近江百花苑として季節の花が植えられ、他の季節も楽しませてくれます。

 また、ナンジャモンジャとロウバイをそれぞれあしらった花まもりが一体千円で授与されています。

周辺のおすすめスポット

 沙沙貴神社から歩いて15分程のところに、天正七年(1579)、浄土宗の僧と法華宗信徒が安土城下でもめ事を起こしたのが発端となった、浄土宗と法華宗の宗論(しゅうろん)「安土宗論」の舞台となった浄厳院があります。詳しくは「新近江名圖會第264回」を参照ください。

アクセス

  沙沙貴神社まではJR琵琶湖線の安土駅から徒歩20分ほどになります。

 (内田保之)

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