新近江名所図会
新近江名所圖會 第421回 伝説の白拍子・祇王ゆかりの水路をめぐる―祇王井川ほか―
野洲市中北にある祇王寺(ぎおうじ)は、鎌倉時代に成立した『平家物語』に登場する、平清盛に寵愛された白拍子(しらびょうし)の祇王の菩提を弔うために建立された寺です(写真1) 。白拍子とは、男装して当時流行していた今様(いまよう:平安中期から鎌倉時代にかけて宮廷などで流行した歌謡)を歌い踊った女性のことを言います。権力者であった平清盛の寵愛を受けた祇王は、美人であるうえに、優れた教養の持ち主であったと想像できます。
この寺に伝わる『妓王寺略縁起』(安永5年・1776)には、「祇王は近江国野洲郡江辺荘(現在の野洲市永原・中北・北付近)生まれで、京に上り白拍子となり、平清盛の寵愛を受けた。故郷の村人が水不足に苦しんでいたのを思い、祇王が清盛に願い出て開かれた用水が祇王井川である。」と記されています。
◆おすすめPoint
祇王寺から南西側に200m離れたところに、土安(てやす)神社があります(写真2)。「(祇王井川の)水路を掘ろうとするが流路を決められずにいたところ、一人の童子が現れ、童子に従って河を掘ると一夜のうちに祇王寺川ができあがった。」という伝説に登場する童子がまつられています。
◆周辺のおすすめ情報
水田に水を引くための用水路として掘削された祇王井川は、滋賀県で一番大きい川である野洲川から水を引いています。水源から約3.5km北東に進んだところにある生和神社(いくわじんじゃ)の裏手で東祇王井川と西祇王井川(童子川)に分岐し、分岐した地点から約4.0km進んだ地点で再び合流して、琵琶湖に繋がる家棟川(やむねがわ)に流れ込みます。
いろいろな伝説が残る祇王井川ですが、実際には伝説通りの年代に開削されたのかは定かではないようです。しかし、延長12kmにわたって人力で田地に水を引くための大工事を行った古代の人の労力は測り知れないと思います。祇王井川は、ほぼ全域にわたって道路が脇にあるので、道路を歩きながらゆっくりと観察できます。
◆アクセス
◎土安神社・祇王寺・祇王屋敷跡
公共:野洲駅南口から、野洲コミュニティバス「おのりやす」祇王・中里コース、祇王幼稚園バス停下車。徒歩10分。
車:名神高速道路「栗東IC」から国道8号線経由で約30分。土安神社・祇王寺・祇王屋
敷跡には駐車場がありません。野洲市観光物産会の観光情報(HP)によると、永原
御殿前の無料駐車場を利用してくださいとのことでした。
※野洲コミュニティバス「おのりやす」は、バスの運行本数が少ないため、ご注意ください。
運休日は、日曜日・祝日・年末年始(12月29日~1月3日)
※祇王寺を拝観するには、予約が必要です。問い合わせ先、野洲市観光物産協会(電話:077-
587-3710)。拝観時間、9時~16時30分(定休日は、年末年始)。拝観料、志納(1人200
円程度)。
◎祇王井川→看板表示がある地点は、野洲市大畑。
公共:JR琵琶湖線野洲駅下車。野洲駅南口から、野洲コミュニティバス「おのりやす」三上コース、大畑バス停下車。徒歩5分。野洲駅南口から、徒歩15分。
車:名神高速道路「栗東IC」から国道8号線経由で約20分。駐車場はなし。野洲駅周辺
の民間の駐車場をご利用ください。
★参考文献:『清盛・妓王ゆかりの祇王井川散策絵図』滋賀県野洲市観光物産協会
(田中 咲子)