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新近江名所図会

新近江名所圖會 第383回 岩間寺―大津市と宇治市の境の山寺

大津市

岩間寺(いわまでら)は正式には岩間山正法寺(しょうほうじ)と称し、真言宗醍醐派、西国三十三所第十二番札所としてよく知られ、滋賀県大津市と京都府宇治市の境にある標高443mの岩間山の中腹にあります。

写真1 夫婦桂(ご本尊を感得した霊木)
写真1 夫婦桂(ご本尊を感得した霊木)

この寺の始まりは、縁起によると、“養老六年(722年)、元正天皇の重い病を治すために越前から泰澄(たいちょう)大師が招かれ、その祈祷により病は見事に癒えた。大師が越前に帰る途中、霊地を求めてこの地を訪れ、桂の霊木が光り輝くさまを見て、このなかに千手観音菩薩を感得し、そのお姿をこの霊木に刻み、元正天皇の念持仏を胎内に納め本尊として寺を開いた。”というものです。
ご本尊の元正天皇念持仏の千手観世音菩薩(像高四寸八分・金銅仏)は秘仏で、三重の厨子に安置され、普段は御目にかかれません。ご本尊は衆生(しゅじょう:生きとし生けるもの)を救うため、毎晩厨子を抜け出し世界中を駆け巡り、日の出頃、岩間山に戻られた時には汗をびっしょりかいておられるので「汗かき観音」さんとも呼ばれています。
木彫のご本尊は現存していませんが、脇侍に泰澄作と伝わる等身大の吉祥天と婆藪仙人(ばすせんにん)をしたがえています。いずれもカツラかと思われる一木造りの堂々としたお像で、千手観音の眷属(けんぞく)・二十八部衆のうちのお二人です。お堂の中は薄暗いので見えにくいのですが、近い距離でリアルなお姿を拝見でき驚きました。
また泰澄が当地に伽藍建立の際、たびたび落ちる雷に困り、その法力で雷を封じこめ、落ちる訳を尋ねられたところ、雷は大師の弟子になりたいと申し出たため、大師は快く雷を弟子にし、その代わり、岩間寺に参詣の善男善女には雷の災いを及ぼさないことを約束させた、という伝承もあり、これが「雷除け観音」とも呼ばれる由縁です。本堂がある平場より石段を下っていくとその雷神が自らの爪で掘ったという「雷神爪掘湧泉」があり、満々と水を湛えた池もあります。(写真2)

写真2 雷神爪掘湧泉
写真2 雷神爪掘湧泉

そのほか、本堂横に、岩間山に参籠して霊験を得、俳句を確立したという松尾芭蕉が、「古池や蛙とびこむ水の音」の句を詠んだと伝えられる池があり、不動堂の向いには火伏の銀杏と崇められる、樹齢350年と伝わる大銀杏があり、その樹下には稲妻龍王が祀られています。また、入山所から参道をまっすぐ下って行った、岩間寺山内図の大きな看板がある広場の手前には、泰澄が加賀の白山から勧請した白姫龍神が祀られています。

◇開山1300年記念秘仏本尊御開帳
この2022(令和4)年10月15日から12月4日まで、秘仏本尊特別御開帳で普段は御前立しか拝めないご本尊をじかに拝むことができます。またこの期間中の特別朱印を拝受できます。また11月22日から12月4日までは夜参りとして17:00~19:00までお参りできます。

おすすめPoint ―ご本尊出現の霊木と桂の巨木林

遥拝所も設けられている長寿桂
写真3 遥拝所も設けられている最大の桂の樹。長寿桂としてしめ縄が巻かれカミとして祀られる

本堂の向かいに立つ桂の巨木は、ご本尊出現の霊木として信仰されています。本尊を刻んだ後の切り株から再び芽生えたといわれ、幹が二本の株立ちのようすから「夫婦桂」と呼ばれているようです。(写真1)
また、本堂から奥宮神社に向かう道を行くと広く開けた谷が見えてきます。この谷に沿って、驚くほど大きな桂の巨木が群生しており、この巨木群を遥拝する社も設けられています。(写真3)本尊出現の霊木だけでなく、このあたりは、日本随一※ともいわれる桂の巨木の群生地であるようです。桂の木は、谷筋や湧水地の付近など水脈のある所によく生えている植物です。雨をもたらす雷にまつわる伝承、水を好む桂の木の群生など、「水」に対する信仰がこの地を霊場たらしめている所以なのではないでしょうか。
※寺の本堂近くの説明書きによる。また谷側は宇治市と接しているので宇治市の名木に選定されている。

周辺のおすすめ情報 ―奥宮神社からの眺望
桂の巨木群生の遥拝所を離れ、上醍醐方面にむかって進むと、奥宮神社に行く分岐があり、岩間山の琵琶湖側の面に奥宮神社が鎮座しています。道中はお寺の参道のように舗装されていない自然の林道なので軽トレッキング用の靴のほうが良いでしょう。神社は昭和に出来たこじんまりした神社ですが、社殿地に上がる坂の横に琵琶湖や周辺を展望できる絶景スポットがあります。眼下に石山の町並み、京滋バイパス、少し向こうに三上山、琵琶湖方面に目をうつすと琵琶湖大橋なども見えます。(写真4)見透しが利く天候であれば、伊吹山、霊仙山なども見えるそうです。

奥宮神社からの眺望-近江大橋・琵琶湖大橋
写真4 奥宮神社からの眺望-近江大橋・琵琶湖大橋

◆アクセス
【公共交通】JR東海道本線石山駅、京阪電車石山駅から京阪バス52・53・54系統、中千町下車徒歩約50分(ひたすら登りです。)
【自家用車】京滋バイパス石山ICから約10分。名神高速瀬田東ICから約15分。
※毎月の御縁日(第三日曜日)には石山駅からシャトルバスも運行されます。詳しくは岩間寺のホームページをご確認ください。
〔拝観料〕500円(特別御開帳期間は1000円)開門時間;9:00~16:00
(小竹志織)

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