調査員の履歴書
『インタビュー/調査員の履歴書』№18「なぜかこの業界に迷い込み、気が付けば15年…」
Q.お名前と所属部署を教えてください。
木下義信(きのした よしのぶ)といいます。これまでは、県内各地の発掘調査の現場担当をしておりましたが、令和4年度から総務課企画室に所属しています。
企画室では、県内の市町さま、民間事業者さまや大学との連携事業に関わる多様な業務を行っています。簡単に言うと、わたしたちが持っている文化財の知識や経験を活かして、いろんな人達のお役に立つ仕事、多くの人が文化財を楽しんでいただけるような仕事をしています。
Q.どんな学生時代を過ごしていましたか?
学生時代は考古学とはほとんど縁がありませんでした。バイトに草野球に麻雀にと、ほとんど遊びに明け暮れた4年間でした。学部も考古学とは全く無関係な経済学部だったので、毎日数字と悪戦苦闘していたのを覚えています(悪戦苦闘するほど勉強はしていませんでしたが…)。そんななかで、大学3年生の新学期のカリキュラムを決めるときに「考古学実習」の科目が目につき、たまには数字とかけ離れた授業を受けてみたいな~と軽い気持ちで参加したのが、初めて考古学と関わりをもった瞬間でした。そこでは、土器の実測や、平板による地形測量なんかを経験させてもらい、一週間に一度、数字から離れられる癒しの時間として、とても楽しく実習に参加させてもらいました。
卒業後、考古学とはまったく縁のない企業に就職し、サラリーマンとして過ごしていましたが、いろいろと紆余曲折を経て、気づけばこの業界にどっぷりつかっているのも、考古学との縁なのかな~とつくづく思ったりします。このあたりの話は長くなるので、次の機会にでも…。
Q.この仕事についてから経験した印象的な話を教えてください。
この業界に入り、一番長く従事したのが発掘調査の仕事です。ひとつの発掘調査現場を、たくさんの人たち、例えば補助員さん、シルバーの作業員さん、重機のオペさんたちと、がっぷりよつになって完了したときの達成感は何物にも代えがたい感覚がありますね!調査員ではありますが、年齢的には自分が一番若いケースも多く、段取りがうまくいかず、ときには作業員さんから怒られることもしょっちゅうでした(苦笑)。そんななかで、みなさんの知恵を借りながら、いろんな工夫をして現場を進めていくと、発掘調査はチームプレイなんだとあらためて思い知らされます。発掘調査に参加してくださるみなさんは、いろんな知識や経験をお持ちの方々で、とてもいい人ばかりです。そんな経験豊かなみなさんのお話を、休憩時間に一緒にタバコをふかしながら賑やかにおしゃべりし合う時間が、なによりの宝物と思っています。
Q.現在所属する企画室で経験した印象的な話を教えてください。
少し前に、研修で福井県の小浜(おばま)市に行ったときに、ボランティアガイドをしておられる一人の男性と出逢いました。その方は、小浜市に生まれ、育ち、小浜のことが好きで好きでたまらなくて、そんな小浜市のことを何とか盛り上げたい一心でガイドになったそうです。その方のガイドは、とても的確で、さらにわたしたちを楽しませてくれて、小浜市のことを知らないわたしも「ここは第二の故郷だ!」と思ってしまうくらい素晴らしいものでした。
しかし、ガイドの高齢化、ボランティアで行うことの限界、地域の文化財を未来へ伝えていくことの課題など、問題は山積みで、自分ではどうすることもできない。小浜市に対する自分の想いがこれから先につなげることができるのかが本当に不安だと、いまの素直な心境も教えてくださいました。こういった課題は、当然のことながら、滋賀県の各所でも起こっています。熱い想いを持ったガイドさんが描く未来、それを実現するにはどうしたらいいのか、これはこれからの私自身の大きな課題なのかもしれません。
Q.最後に読者の皆さんに一言お願いします。
地元のことが好きで好きでたまらなくて、地域の文化財を未来に伝えたい。でもそのためにはたくさんの課題があるという状況が、みなさんの身の回りで起こっていませんか?わたしたちが目指すひとつの目標は、「文化財で滋賀を元気にする」ことです。わたしたちが行っている仕事のなかで、みなさんが身近で困っている文化財に関するさまざまな課題、そのうちのひとつでも解決できればと思っています。そんな想いを胸にこれからも業務に邁進したいと思いますので、これからのわたしたちにぜひご期待ください。
(木下義信)
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