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新近江名所図会

新近江名所圖会 第30回 三雲城と八条岩

湖南市
湖南市吉永
三雲城石垣
三雲城石垣

三雲城は、近江守護佐々木六角氏の家臣である三雲氏の居城として知られています。近年、巨大な石材を用いた虎口(城の石垣)を始め、主郭前面に大きな石垣があることで注目されている城郭です。
一般的に、城郭への石垣の本格的な採用は織田信長の安土城とされていますが、近江では、これに先行して城郭に石垣が用いられている事例が多く知られています。長浜市小谷城、米原市鎌刃城、東近江市佐生城、近江八幡市観音寺城、野洲市小堤城山城などです。
今回紹介する三雲城も、信長に先行して近江を支配していた六角氏の家臣の城郭であり、安土城に先行する城郭と考えられます。現在見ることができる城郭の遺構は、六角氏が信長との抗争に敗れた後「破城(はじょう:不要となった城郭を破壊して使えないようにすること)」を受けた姿とされています。

三雲城石垣
三雲城石垣

確かに、虎口付近など大きく崩れてはいますが、何かしら違和感のある城郭です。どの様な違和感?、それは主郭に入ると、主郭が最高所にないことが解ります。主郭の背後には更に高い尾根が延び、ここに小規模な郭が連続して構築されていますし、主郭を見下ろす位置に巨岩の露頭が見られたりします。戦闘という緊迫感より、何となく伸びやかな、そう、神仏の気配を強く感じるのです。

おすすめPoint

八条岩
八条岩

三雲城の見所は、主郭から東にやや降ったところにある「八条岩」と呼ばれる磐座です。麓の三雲から見上げると、山の中腹に白く輝く巨大な磐が見えます。この磐が八条岩です。磐の近くまで行ってみましょう。麓から見ると鏡のような磐に見えますが、近くで見ると巨大な二つの磐が並び立っていることが解ります。まるで、一枚の磐が割れて現在の姿になったようにも見えます。そして、磐の裾には龍神でしょうか白蛇の像を祀小祠があります。八条岩はまさに神の宿る磐座なのです。
そして目を西に転じると、さらに怪異な岩が目に入ります。二つの巨岩の間から一本の巨岩がほぼ水平に伸びています。自然のなせるわざとは思えない造形です。
三雲城は、女性軸と男性軸を連想させるこの二つの磐座の背後に展開し、さらに城内にも磐座と思われる巨岩があります。この関係は第4回で紹介した高島市の西山城と鳴り岩の関係と共通するもので、神聖な場を城に取り込むことにより、神に対する領民の崇拝を領主に対する崇拝にすり替えようとする武士(もののふ)のしたたかな戦略なのです。

八条岩 その2
八条岩 その2

周辺のおすすめ情報

三雲城周辺には、近世東海道が通過している関係もあり、野洲川を渡河する横田の渡し(今は無い)や、その名残で天保義民碑・常夜灯がみられます。また、野洲川にかかる横田橋をわたって対岸の岩根山にある善水寺もおすすめです。国宝に指定されている本堂は独特の雰囲気を醸し出しており、堂内には重要文化財に指定されている木造薬師如来像をはじめとして梵天・帝釈天・四天王立像などが安置されています。
そして、少し足を伸ばして十二坊温泉ゆららはいかがですか。温泉につかって体の疲れをとってみては。

アクセス

【公共交通機関】JR草津線三雲駅下車。徒歩1時間
【自家用車】名神高速道路栗東ICから20分、駐車場無


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(大沼 芳幸)

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