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新近江名所図会

新近江名所圖會 第352回 異世界へようこそ 居並ぶお地蔵さんと風車―愛荘町湖東三山・金剛輪寺―

愛荘町

愛荘町の金剛輪寺(こんごうりんじ)は、百済寺(ひゃくさいじ)・西明寺(さいみょうじ)と並んで湖東三山(ことうさんざん)の一つとして、紅葉の名所として有名です。湖東地域のみならず滋賀県を代表する天台宗の寺院の一つです。
金剛輪寺は、寺伝によれば聖武(しょうむ)天皇の勅願(ちょくがん)で奈良時代の僧・行基(ぎょうき)によって創建されたといわれ、天平9年(737)または天平13年(741年)と伝えられています。その後、平安時代に、天台宗の僧・慈覚大師(じかくだいし)円仁(えんにん)によって再興され、寺では円仁を中興の祖としています。

写真1 本堂
写真1 本堂

本堂に祀られる本尊は、行基が自ら刻んだと伝えられる聖観音菩薩立像で、荒々しい鑿跡(のみあと)を体の全面に残す不思議な像で厳重な秘仏として厨子の中に安置されています。この他、堂内には、阿弥陀如来坐像、十一面観音立像など平安時代から鎌倉時代の仏像が安置され、その多くが国の重要文化財に指定されています。
本堂は、元寇の戦勝記念として近江守護六角頼綱によって建立されました。本堂の須弥壇(しゅみだん)金具には弘安11年(1288)の銘が残っていますが、建物の様式としては室町時代に降り、この時代に再興されたものと考えられ、国宝に指定されています。(写真1)

写真2 地蔵菩薩像(参道)
写真2 地蔵菩薩像(参道)

また、三重塔(鎌倉時代)および二天門(室町時代)も国指定重要文化財、本坊明壽院(みょうじゅいん)の庭園は、桃山時代から江戸時代の中期にかけて造られたもので、国の名勝に指定されています。非常に見所の多いお寺です。

おすすめPoint
【参道の千体地蔵】
そのような、みどころの多い境内の中で、おすすめするのは、「千体地蔵」とも呼ばれる地蔵菩薩像です。金剛輪寺の山門から本堂に至る参道の途中、左手に、本坊である明壽院があり、その門を通り過ぎたあたりから本堂方面へ、参道の両脇や坊跡である平場に地蔵菩薩像が安置されています(写真2・3)。それらが織りなすその風景は、「累々と」といった表現がしっくりと来るような光景です。それぞれに供えられたカラフルな風車と相まって、インスタ映えと言ったら場違いかもしれませんが、目を奪われる異世界を演出しています。
山門から本堂までは、緩やかなスロープが続いており、徒歩で20分ほどかかりますが、その時間を忘れるような光景です。

写真3 地蔵菩薩像(平場)
写真3 地蔵菩薩像(平場)

周辺のおすすめスポット
金剛輪寺の創建にもかかわったと考えられる渡来人が作ったとされる県下最大級の群集墳、金剛寺野(こんごうじの)古墳群が存在します。現在はその中の一部を「依智秦氏の里(えちはたうじのさと)古墳公園」として整備、公開をしています(新近江名所圖会第73回)。
また、湖東三山の百済寺(新近江名所圖会第336回)、西明寺(新近江名所圖会第130回)も併せて立ち寄るのもおすすめです。ただし、紅葉の季節は、この三つのお寺を繋ぐ国道307号が非常に混みますし、駐車場もなかなか止められませんのでご注意を。
(堀 真人)

アクセス
【公共交通機関】JR稲枝駅より「愛のりタクシーあいしょう」で約15分(要予約)
【自家用車】名神高速湖東三山スマートICより約5分 駐車場あり

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