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新近江名所図会

新近江名所圖會 第398回 たぬきの焼き物で有名な信楽焼―信楽陶芸村―

甲賀市
写真1 信楽陶芸村入口

 滋賀といえば信楽焼のたぬき、という方も多いのではないでしょうか。

 甲賀市信楽町には信楽焼の窯元が多くあり、それぞれの特徴を生かして商品の販売や窯の見学などの事業をおこなっています。そのなかのひとつが信楽陶芸村(写真1)です。信楽陶芸村は、明治21年に開窯した奥田忠左衛門(写真2)窯を中心とした施設で、両側に民家が並ぶ坂を上ると視界一面のたぬきがお出迎えしてくれます。ここでは信楽焼製品の販売、陶芸体験、カフェなどがあります。

写真2 奥田中左衛門窯

 信楽焼は日本六古窯(ろっこよう)のひとつで、その起源は中世まで遡ります。13世紀半ばに常滑(とこなめ)焼から技術を導入し、茶人が生活雑器だった信楽焼を茶陶に転用したことで、全国に広まりました。江戸時代には、壺や甕などに加え、生活用品全般特に釉薬小物製品を生産し、明治から戦後にかけては火鉢の生産を一手に担いました。

 ではなぜ『信楽焼といえばたぬき』なのでしょうか。たぬきはもともと商売繁盛などのご利益がある縁起物とされていました。また、『八相縁起』とよばれる笠・目・笑顔・徳利・通い帳・大きなお腹・金袋・しっぽにはそれぞれ8つの意味が込められています。

 信楽たぬきのイメージが広まったのは、昭和26年に昭和天皇が信楽行幸されたのがきっかけでした。当時、信楽たぬきに日の丸の旗を持たせ歓迎する様子に昭和天皇が感動し、歌を詠んだことで全国に広まりました(写真3)。

写真3 天皇陛下を信楽焼狸がお出迎え(「天皇陛下行幸記念」信楽町発行より)

おすすめポイント

 この施設で人気なのがのぼり窯カフェです(写真4)。約90年前に作られた登り窯をカフェとして利用しており、オリジナルのロールケーキやランチを味わうことができます。登り窯とは山の斜面を利用して細長い窯を数室重ねた、隣室の余熱を利用しながら焚き上げていく窯のことで、保存がとても難しく現在も完全な形で残っている例は多くありません。信楽陶芸村のものは全長25mで11の焼成室があります。日本最大級の登り窯は同じ信楽焼の窯元の宗陶苑もので、全長30mで11の焼成室があります。また8月末までの期間は夜カフェということでライトアップされた窯のなかでディナーカフェもされているそうです。自分だけのたぬきづくりができるセットプランもあるので、この機会に足を運ばれてはいかがでしょうか。

写真4 のぼり窯カフェ

周辺のおすすめ情報

 信楽陶芸村から南東へ行くとすぐに信楽伝統産業会館があります(新近江名所圖會 第323回)。また、北へ行くと滋賀県立陶芸の森があり、信楽焼のことがわかる施設が充実しています。伝統産業会館と陶芸の森で信楽焼の歴史を学び、周辺の窯元で陶芸体験をするのもいいかもしれませんね。

アクセス

【公共交通機関】信楽高原鉄道信楽駅より西へ徒歩10分

【車】新名神高速道路信楽ICから南へ10分

(三好佑佳)

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