新近江名所図会
新近江名所圖會 第411回 義仲・芭蕉ゆかりの地を訪れる―大津市義仲寺―
義仲寺(ぎちゅうじ)は、JR膳所(ぜぜ)駅・京阪膳所駅の北約300mに位置する国史跡です。木曽義仲と松尾芭蕉の墓所として知られ、近隣のみならず全国から多くの人が訪れています。
木曽義仲は、源頼朝のいとこで、源平合戦では平氏の大軍を破る活躍を見せたものの、のちに頼朝一派と対立し大津で討たれました。義仲の側室である巴御前(ともえごぜん)が、彼を弔うため墓のそばに草庵を結びましたが、これがのちの義仲寺です。義仲寺はその後一度は荒廃するものの、戦国時代、当時近江国を治めていた佐々木氏によって再建されました。
さらに時代が下り江戸時代、義仲に感銘を受けた松尾芭蕉は、度々義仲寺を訪れました。彼は大坂で亡くなりましたが、「骸は木曽塚(義仲の墓)に送るべし」という本人の遺言により、墓が義仲寺境内に建てられました。
◆おすすめポイント
義仲の墓は、境内のほぼ中央に位置しています(写真1)。また、彼の墓の北隣に巴塚(巴御前を弔ったもの)、南隣に芭蕉の墓が建てられています(写真2・3)。墓の向かい側に位置する朝日堂は義仲寺の本堂であり、義仲・義高父子の木像がそれぞれ厨子に納められています。木像は普段見ることはできませんが、1月に義仲の法要が行われる際、公開されます。
墓の背後には無名庵(むみょうあん)という建物が位置しています。無名庵は、元々巴御前が義仲供養のために滞在した場でしたが、芭蕉が義仲寺を訪れた際に宿泊拠点としていました。現在は一般向けに貸し出しが行われ、度々句会などが開かれています。また、境内の奥に位置する翁堂(写真4)には、芭蕉の像やそれを取り囲むように配置された俳人たちの肖像画が安置されています。また、この建物の天井には、伊藤若冲(じゃくちゅう)作「四季花卉図天井画(しきかきずてんじょうが)」のデジタルコピーがあります。年季の入り方まで再現された姿を一度その目で見てみてください。
境内の各所には、芭蕉やその門人らの句碑が建てられています。写真5に示したものは芭蕉の有名な句の一つ「旅に病で夢は枯野をかけ廻る」です。境内のどこにあるのか、実際に探してみてください。また、朝日堂のそばでは「俳句みくじ」を引くことができます。このおみくじは結果が日本語・英語の俳句で示されていることが特徴です。具体的な内容も載っているのでご安心を。そして境内で飼われているカメも見どころの一つ。翁堂前の庭園で見つけることができるかもしれません。
◆周辺のおすすめ情報
膳所駅から義仲寺までは徒歩で行くのが便利なのですが、その際に通るのが「ときめき坂」。ここではラーメンやコッペパンなど食事のできる店が立ち並んでおり、義仲寺の歴史情緒で心を満たすとともにお腹も満たすことができます。また、坂の各所には芭蕉の句を記した看板が見られます。
義仲寺の反対側、膳所駅の南口を右折し国道1号線沿いを進むと、「龍ヶ岡俳人墓地」があります。ここは芭蕉の門人をはじめとした俳人の墓が、まるで句会を開くかのように円状に並んでいます。(新近江名所図会第340回参照)
◆アクセス
【公共交通】JR膳所駅・京阪膳所駅から徒歩10分
【自家用車】名神大津ICから約5分 義仲寺に駐車場がないため、訪れる際は周辺のコインパーキングを利用してください。
(森田真由香)