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新近江名所図会

新近江名所圖會 第382回 大津宿を訪ねて―逢坂峠から浜大津付近までを歩く―

大津市
逢坂峠の常夜灯
写真1 逢坂峠の常夜灯

江戸時代にたいへん賑わっていた、大津宿の逢坂峠(おおさかとうげ)から浜大津付近までを歩いてみました。大津宿は、江戸時代に大名などが参勤交代に利用した、東海道に設けられた宿です。京都から大津宿までは、3里(約12km)の道のりでした。
大津宿内の東海道を夜間に通る旅人のため、夜道を照らす常夜灯が各所に設置されました。写真の常夜灯(写真1)は、寛政6年(1794)に逢坂峠に置かれたもので、逢坂峠を利用することが最も多かった大津の米屋が寄進したものです。「施主 大津米屋中」として、4名の米商人の名前が刻まれています。大津港で陸揚げされた米は、逢坂峠を通って、京都へ大量に輸送されていました。また、この逢坂峠から京都よりでは、名物の算盤(そろばん)や縫い針・「走り井餅」を売る店が軒を連ねていたそうです。

おすすめpoint
逢坂峠から、東海道沿いを東に10分ほど歩いたところに、関蝉丸神社上社(せきせみまるじんじゃかみしゃ)(写真2)があり、さらに上社から300m下った場所に下社(しもしゃ)があります。両社は、付近に都の東の入り口を守る逢坂関が置かれたことから、その関の鎮守や道中の安全を守るために創設されたと考えられています。

関蝉丸神社上社
写真2 関蝉丸神社上社

上社の祭神は猿田彦命(さるたひこのみこと)、下社の祭神は豊玉姫命(とよたまひめのみこと)です。両社には、天慶9年(946)に蝉丸の霊が合祀されました。蝉丸は、平安時代に逢坂山に居住していた、都でも名高い琵琶の名手でした。蝉丸が合祀されたことにより芸道の神としても信仰を集めるようになり、江戸時代には全国の舞踊・曲芸人に免状を与えていました。現在は、上社・下社ともに、地元の方々の氏神様としての役割を担っています。

周辺のおすすめ情報
関蝉丸神社下社から、東に15分ほど歩いたところに、明治2年(1969)創業の三井寺力餅本家があります。三井寺の鐘を奪って比叡山に引きずり上げたという、弁慶の怪力にちなんで作られている、「三井寺力餅」を販売しています。「三井寺力餅」(写真3)は、近江産のもち米から作った餅を串にさし、糖蜜と青大豆の黄な粉をかけたものです。注文してから、一つ一つ作るため、できたてのお餅のふわふわとした食感が味わえます。小さめで甘すぎないので、いくらでも食べられます。3本324円で販売していて、買いやすい価格です。茶房では抹茶付きで700円で食べることができます。(価格は2022年10月調べ)

三井寺力餅
写真3 三井寺力餅

アクセス
◎逢坂峠の常夜灯→京阪大谷駅から徒歩5分、駐車場なし。
◎関蝉丸神社上社→京阪大谷駅から徒歩10分、駐車場なし。
◎三井寺力餅本家→京阪浜大津駅から徒歩5分、駐車場なし。営業時間7:00~19:00 年中無休 電話:077-524-2689
※今回紹介した場所は、交通量が多く、駐車場がないため、徒歩での見学をお勧めします。徒歩で見学の場合は、逢坂峠の常夜灯から三井寺力餅本家までは、下り坂となっているため、京阪大谷駅まで行き、逢坂峠の常夜灯→蝉丸神社上社・下社→三井寺力餅本家の順で歩くと、効率よく歩くことができます。
※駐車場は、浜大津に、浜大津公共駐車場・大津港公共駐車場があります。名神高速道路大津インターチェンジから車で約10分です。

◎参考文献:「大津 歴史と文化」大津市歴史博物館 平成16年
「京都名所図絵」小学館 1997年
「古地図で楽しむ近江」風媒社 2017年

(田中咲子)

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