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調査員の履歴書

『インタビュー/調査員の履歴書』№7「関西に来た東北人」

その他

Q.お名前と所属部署を教えてください。
A.調査課の佐藤巧庸(さとう こうよう)と申します。大学院を卒業後、当組織に所属して3年目になります。

Q.現在はどんな仕事を担当されていますか?
A.滋賀県内の遺跡を発掘調査しています。天気の良い日は、現場で作業員さんたちと一緒に遺跡を掘って汗を流し、雨の日は、遺跡から掘り出した遺物や記録物を整理しています。最近は、調査前の事前打合せや発掘計画など、事務的なことも少しずつ身に付けていっています。

とある調査の一コマ
とある調査の一コマ

Q.考古学に関わる仕事に就いた志望動機やきっかけは何でしたか?
A.発掘調査現場や研究組織で「考古学って、おもしろいかも!」を感じたからです。
中学高校の時は、机に座って勉強することが得意ではなかったので、大学ではフィールドワーク系の学問に取り組み、自分の手で新しいことを発見したいと思っていました。大学進学を機に移り住んだ北陸の地では、発掘調査や体験イベントに声をかけてもらうことがありました。また、学外の研究プロジェクトに加えてもらい、様々な視点から「考古学」に関わる機会もありました。その中で、土の中から出てきたモノから、過去の人たちに関するコトを考える面白さを感じました。
真剣に、時にニヤニヤしながら、研究や調査に取り組む人たちの姿をみて、将来は考古学に関係する仕事に就くことも良いなぁと、感じたことが大きいと思います。

Q.全国各地に調査組織がありますが、どうして滋賀県文化財保護協会を選んだのですか?
A.就職先を探している時に、運良く素敵なご縁を頂いたから滋賀に来ました。
選んだ理由の一つとして、本協会は発掘調査、博物館運営、教育普及活動など埋蔵文化財に対する幅広い事業展開をしており、考古学に対して多角的な関わり方をしたいと考えていた私にとっては、魅力を感じました。
入社試験を受けた背景には、研究会で知り合いになった方や、仕事も研究も熱心に取り組まれている方々の活躍を見聞きするとともに、私の周囲の考古学関係者から「あそこの組織は勢いあるよ」と背中をプッシュしてもらったこともあります。当時、考古学のメッカだと信じていた関西を掘れる人材になれたら、どこでも通用するのではないかとも思っていました(笑)。

Q.将来、この職場で挑戦してみたいことはありますか?
A.琵琶湖周辺に眠る貝塚や低湿地遺跡を掘る機会があれば、是非調査してみたいです。
日本の土は酸性土壌のため、骨や植物といった有機質のモノは溶けてなくなってしまいます。ただし、それらが水中や貝塚の中に残されている場合には、当時のまま出土する可能性があります。過去の人達の営みについて動物骨から考える「動物考古学」という分野を大学では学んできたので、その専門性を活かした調査に挑戦したいです。

Q.仕事で辛いことはありますか?
A.そーですねぇ~。真冬の季節でも野外調査を進めないといけない時があることが辛いところです(笑)。
東北人的な視点からすると、冬は完全にオフシーズンという気持ちで二十数年間過ごしてきたため、雪が舞い、指先の感覚が無くなるくらい極寒の中で調査を進めないといけない時は、泣きそうです。辛い事も時々ありますが、それに勝る喜びもたくさんあります。

Q.最後に読者の皆さんに一言お願いします。
考古学では、過去との対話が移植ゴテの一掻きから始まります。What is doing archaeology? 恩師から送られた言葉ではありますが、発掘調査を生業とする一人として、考古学することの意味を絶えず自身に問いかけ続けることが大切です。
 【佐藤巧庸の社会貢献活動】はコチラ。

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