調査員の履歴書
『インタビュー/調査員の履歴書』№15「思い込みと勢いだけでスタートした調査員」
Q.お名前と所属部署を教えてください。
A. 堀真人(ほりまさと)と申します。所属部署は、総務課の企画室です。
Q.現在はどんな仕事を担当されていますか?
A. 現在は、県内の市町、大学、民間事業者さんと連携した事業を企画、実施したりしています。具体的には、県内の市町の文化財担当者の皆さんと勉強会を実施したり、学生さんのインターンシップの受け入れを担当したり、県内の文化財を巡るバス旅行のお手伝いやカルチャースクールの講座の企画などを担当しています。
Q.文化財や考古学にかかわる仕事に就いたきっかけは何ですか?
A. 小学生の頃に、母親の影響で化石を掘りに行ったり、河川敷に珪化木を拾いに行ったり、夏休みの自由研究で地域の歴史を調べたりしたのが興味を持ったきっかけです。でも、当時は、化石も遺物の意味合いの違いは全く分かっていませんでした。ただ、どちらも古いもの、昔のものだ、ぐらいの認識です。
また、小学生の時に同級生の間で、化石を集めたり、石器を集めたりするのが流行っていたのも影響したと思います。畑を友人たちと歩き回って、石鏃を探して歩いて、見つけると自慢し合っていました。石斧を持っていた友人もいました。当時きれいな石だと思って家に持ってかえってきた拳大の黒光りする石があったのですが、今思えばおそらく黒曜石の原石だったと思います。今だからわかることですが。
Q.そんな中でなぜ考古学を勉強するようになったのですか?
A. 大学に入学するまでは、歴史が好きだったし、科目としても得意だったこともあり、歴史を勉強したいな、するとしたら考古学が面白かもといった漠然とした思いしかありませんでしたが、入学後は考古学のサークルに入り、先輩についてまわって、ほとんど思い込みで将来は専門職に就こうと思っていました。発掘調査の現場は楽しかったのですが、勉強そのものはあまり熱心な学生ではなかったと思います。
Q.考古学のどのようなところに魅力を感じたのですか?
A. 魅力は、ある意味、小学生の頃に畑で石器探しに没頭したことと変わらず、発掘調査の現場で出土した遺構や遺物に最初に触れることができることです。ただし、小さな時と違うのは、その最初に触れることができることと引き換えに、出土した、検出した遺物・遺構をしっかりと意義付けする責任が伴うようになりました。でも、この意義付けすることは、まさに考古学における研究に相当しますので、モノをみつける喜び以上に、パズルを解いて、答えに辿り着くような面白さがあります。ただし、両方とも仕事していますから、いろいろと大変なこともありますけど・・・。
Q.協会に就いてから思うことはありますか。
A. 就職してから特に感じるのは、一人では発掘調査はできないということです。調査員として現場の運営をする立場になって初めて実感しました。よくよく考えれば当たり前の事なのですが。現場では、作業員さんをはじめ、補助員さん、重機を動かすオペレーター、現場の経理を担当してくれる総務課の方々、地元の方々と本当に多くの人の協力と理解があって成り立っていることがよくわかりました。
また、就職して調査員になることがゴールではなく、スタートに過ぎないことも併せてよくわかりました。就職してすぐの頃は、知識も経験もなくて、本当に勢いだけで仕事をしていました。少しずつ慣れてくると、勢いだけではだめなことを実感し、必要に迫られたことあり、勉強をするようになりました。もう、就職して30年近くたちますが、まだまだ足りないことだらけで、日々精進です。
Q.最後に読者の皆さんに一言お願いします。
A. 私たちが従事している埋蔵文化財の発掘調査の成果の多くは、博物館や埋蔵文化財センターなどのガラスケースの中で展示されることによって、皆さんの目に触れることが多いかと思います。でも、博物館などのケースに入っている遺物は、芸術作品のように「美しい」とか「すごい」といったように直感的に感じることができないものが多いです。だからこそ、私たちの仕事は、その遺物などの魅力をわかりやすく伝えることだと思っています。
これからも、皆さんの心に響くような仕事(発掘調査の成果等をわかりやすく伝える)を掘り下げていけたら良いなと思っています。そして、皆さんにはぜひとも博物館等に足を運んでもらえると幸いです。
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